科学技術利用のニ面性とどう向きあうか

摘要

科学技術は，民事目的でなされても常に軍事目的に転用し得るというニ面性を持っ.人類社会全体に圧倒的影響力を持っ科学者や技術者の社会的責任は重大だ.日本学術会議は，1949年の設立時に「科学が文化国家ないしは平和国家の基礎であるとの確信の下に，わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献せhことを誓う」と宣言し，1956年と1967年の総会でも「軍事目的の科学研究を行わない」との声明を出した.その背景には，第二次世界大戦までの軍国日本を下支えしていた科学技術に対する痛切な反省があった.日本は，憲法で国民主権を謳い，第9条で国際紛争の解決の手段としての戦争の放棄と戦力の不保持と交戦権の否定を定めた.大戦後70年，今も戦争状態にある国は少なくないが，日本が直接戦争当事国となることを避け得たのは，「平和憲法」の力だ.ノ一ベル委員会は，昨年に続いて今年も「日本国憲法，特に第9条，を保持している日本国民」を平和賞の候補としてノミネ一トしたと報じられた.