建築構造物の設計と安全率

摘要

本稿をお引き受けする際に，若干とまどったのは，私的には現在の建築物の設討，特に耐震設討においては陽な意味での安全率という概念はほとhど無くなっているのではないか，と考えていたことだった。 だとすれば，何について議論をすれば読者の期待に応えられるのだろうか，ということを考えた末に，本稿では建築物の構造設討において安全率という概念がどのように取り扱われてきたのかをまず歴史的に概観し，現在の状況について簡単に解説することにした。 肩すかしにあった読者諸兄には悪しからずご了承いただきたい。 本編に入る前に，建築物の構造設計で考慮している荷重の概要を図示すると図3．1のようになる。 建築構造物はこれらの荷重外力に対して安全であるように設釘される必要がある.