非鉛系圧電セラミックスの研究開発動向：発振子用非鉛圧電セラミックス材料の開発

摘要

圧電セラミックスは電圧発生，歪発生，共振など多様な機能を有しており，センサ，アクチュエータ，超音波モータ，フィルタ，発振子など応用範囲は多岐にわたる．用途ごとに求められる特性も様々である．例えば，アクチュエータでは圧電歪定数が大きいことが最も重要であり，多くの場合，機械的品質係数は小さい方が実用的である．逆に，超音波モータでは機械的品質係数が大きいことが最も重要な要素のひとつとなる．現在，実用されている圧電セラミックスは，大半がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)やチタン酸鉛といった鉛系ペロブスカイト型強誘電体をベースにしたものであり，これらの材料は組成中のTiとZrの混合比の調整や元素置換，あるいは添加などにより，圧電歪定数や機械的品質係数などの諸特性を大幅に変化させることが可能である．例えば，PZTにNbを添加するか，Mnを添加するかで機械的品質係数は数十から数千まで変化する．そこで，アクチュエータにはNbを添加したPZTが，また，超音波モータにはMnを添加したPZTが有用となる．このようにして，鉛系ペロブスカイト材料を用いて広範な圧電応用分野に対応した材料が開発されてきた．