鋳造工場は改善の宝庫

摘要

日本の製造業は20世紀に発展したコンベヤ等によるライン生産から，21世紀は小人数で完結型の生産が可能なセル生産に変わりつつあり，これに伴い作業者に対する要求も，一つの作業を早く正確にこなすだけではなく，多くの仕事ができる多能工化へ変わると言われている。これはかつての大量生産から少量多品種生産へと世の中のニーズが変わってきたことにより，ライン生産では段取替えの自由度が低く生産量の急激な変化にも対応しにくいことが理由の一つとなっている。鋳物では古くから行われている鋳物造り（美術工芸品の類）は優秀な技能者によるセル生産と位置付けることができるかもしれないが，一部の小物量産品は溶解から仕上げまで一貫したライン生産，他の多くの鋳物は溶解，造型，仕上げ等に区切ったライン生産をさらに縦につなげた形で製造されている。 そのためライン生産の短所が現れやすく，連続して製品が流れているように見えても，投入から完成までの時間（リードタイム）は長い。 具体的に言うとライン生産の最大の短所である仕掛りが各ライン内で生じるのに加え，溶解，造型と仕上げの各ラインのライン間にかなりの仕掛りバッファができる。さらに工程内で熱処理を実施する場合，熱処理炉がバッチタイプであれば，1バッチ分の製品が集まるまで待っていなくてはならず，ここでも仕掛りが増加する。 そのため，全体を通したリードタイムは必要以上に長くなる。 このような仕掛りを持つことを生産現場ではムダと呼び，鋳造工場の経営にも大きく影響する。