高Mn，Ni，Si含有オーステナイト系球状黒鉛鋳鉄の諸特性

摘要

1882年，英国のRobert Abbott Hadfieldが高Mn鋼，通称ハッドフィールド鋼を発明した．同材料はCを約1％，Mnを約13％含有する鋼である．引張強さ1，000MPa，かつ伸び50％という強靭性及び優れた耐摩耗性を有することから現在でも広く利用されている．基地組織が準安定オーステナイト組織であるため，外力が加わると加工誘起変態を起こして硬化する．内部は柔らかく，衝撃を受けた表面だけが硬化して摩耗しないため，レールクロッシングや土木，鉱山機械部品に利用されている．近年，非磁性，低温用途で再び脚光を浴びているが，一方で加工が困難という課題が残された材料でもある．