自動車用燃料電池開発の現状と課題

摘要

現在，自動車技術に巨大な革命的変化が起きようとしている。自動車技術は，これまで1876年に発明された内燃機関を使用して20世紀に大きく発展してきたが，近い将来，この内燃機関の長い歴史が，「燃料電池」という効率が高く，排気ガスを出さず，静かな動力を生み出すクリーンな発電技術により置き換えられる可能性が高い。 燃料電池は，水素を燃料として発電する技術であり，これにより石油などの化石燃料に依存しない「水素エネルギー社会」への扉が押し開かれようとしている。 燃料電池の燃料となる水素は，天然ガスや石油などの従来の化石燃料から供給することもできるが，同時に，太陽エネルギー，風力発電，或いはバイオマスなどの多様な自然エネルギーから供給することも可能である。 したがって，21世紀中に枯渇が懸念される化石燃料を補完することが可能であり，将来は，石油に依存した現代文明を根底から覆すような大きな力を秘めている。