JIS G4404に規定されている合金工具鋼は,前号(p.501)表12 JIS工具鋼鋼材の分類ように4種類に分けられている.以下,これに準拠して順次説明する.さて,これらの鋼材の製造工程については,すでに軸受鋼のところで詳細な説明をおこない,合金工具鋼の場合もこれに準ずる方法であるので省略するが,鋼材として機械加工工程に投入される段階では結果として,適正なる球状化焼なましが行われていることが前提になる.したがって,入荷時点で必要に応じ,素材検査を実施すべきである.もし,炭化物が著しく偏析していたり,球状化焼なましが不充分で網状炭化物や層状パーライトが残留していると,機械加工で被削性を阻害し能率を損なう.そのうえ,最終工程で行う熱処理(焼入焼戻し)において,焼割れや変形の原因となるばかりではなく,使用中に破損したり,寿命低下につながる.
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