耐熱材料の開発の現状と展望：耐熱鋼の研究開発の現状と課題－火力発電プラント用耐熱鋼

摘要

高温で長時間使用される耐熱鋼の開発は，火力·原子力発電，化学プラント，廃棄物発電，自動車などの産業の発展の鍵を握っている．この10年間，CO{sub}2削減，省資源，ダイオキシン等の環境リスク物質の低減化が強く求められた社会的背景を受けて，より高温での使用を可能とする高強度耐熱鋼の研究開発に大きな進展が見られ，この分野で我が国は欧米をリードしてきた．例えば，石炭を燃焼して水から高温高圧の蒸気を作りタービンを回して発電する火力発電では，蒸気をより高温高圧にすると発電効率は向上するので，単位発電当たりに使用される石炭燃料が少なくて済み（省資源），石炭の燃焼に伴って大気中に排出されるCO{sub}2などを削減できる．このように，耐熱鋼の研究開発は，エネルギーや環境といつた21世紀の重要課題の解決に直結している．以下では，最近進展が著しい火力発電プラント用耐熱鋼を中心に，高温強度向上の材料設計指針や今後の課題を述べる．