排水·廃液·土壌·地下水浄化対策：下水からのリン資源回収システム

摘要

化学肥料の原料の一つであるリン鉱石は，枯渇が危惧されている資源である。 わが国では，リン鉱石などをすべて輸入に頼っているが，その量は年間約200万tに達している。 これらの多くは化成肥料となり，農地からの漏出水や，生活排水などによる湖沼や内湾などの閉鎖性水域での富栄養化の原因物質となっている。 一方，第5次水質総量規制では，従来のCODに加え，新たにチッ素·リンを総量規制の対象項目として指定する。 このため，閉鎖性水域を放流先とした下水処理施設では，リン除去を行なう高度処理が普及している。 これらの処理施設においては，凝集剤添加活性汚泥法や，嫌気好気活性汚泥法が採用されているが，多量の汚泥の発生，および返流水負荷の増加に伴う放流水質の悪化などの問題点がある。 また，これらのリン除去法は必ずしも利用可能な形態でのリン回収法とはなっていない。本稿は，マグネシウムを用いて排水中のリンとアンモニアを除去すると同時に，生成したリン酸マグネシウムアンモニウム（以後，「MAP」という）をほぼ純粋なMAP結晶として回収する技術の概要と実施例を紹告する。