石油タンクの地震時浮き上がりと局部減肉を考慮した耐震性評価

摘要

地震によるタンク浮き上がり時の側板断面変形や動的非線形性を考慮した浮き上がり挙動を調べるために，三次元弾性シェル要素と流体要素を用いた首班FEM非線形時刻歴解析を実地震波に対し実施し，質点系時刻歴解析結果や三次元シェル静解析結果と比較した。 なお，解析対象は110，000 klの実機石油タンクでありタ解析に用いた地震波は，三陸はるか沖地震1994年A基地EW波（地表面水平最大加速度293gal）である。 1）三次元弾性シェルと液体要素のFEMモデルにより，地震波の主要動の約1．7秒間に対する非線形時刻歴応答解析を実施した結果，最大浮き上がり変位は59mmであり，質点系時刻歴応答解析の結果の56mmとほぼ一致した。 2）時刻歴応答解析による浮き上がり変位は，第1報に示した三次元FEM静解析の結果より小さいが，対象タンクの地震後の調査結果（アニエラ坂上面のコーティングの割れ発生ひずみなど）を考慮すると，三次元FEM時刻歴解析の結果が安当と考えられる。 3）耐震設計上の実用性を考慮して，動的非線形効果を考慮できる質点系時刻歴解析と側板断面変形を考慮できる三次元シェルFEM随静解析を組み合わせて，側板断面変形を考慮した動的浮き上がり変位を算定する方法を提案した。4）浮き上がりに伴う隅角部のピークひずみの繰り返しを考慮して，隅角部の低サイクル疲労強度の評価例を示した。