オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆性

摘要

水素エネルギーシステム機器の材料としてオーステナイト（γ）系ステンレス鋼が用いられることが多い。したがって水素環境で使用する際の脆化，すなわち微量の水素で破断強度や延性が低下したり，一定荷重や歪みでも使用中に破壊したりする水素脆性の理解が必須である。また，安全性の向上や低コスト化のために新しい材料の開発も要望ざれるが，そのためには既存材料を対象とした現象論的なデータだけでなく，水素脆性の本質的な機構も明らかにする必要がある。水素脆性は近年その機構解明について主に低合金高強度鋼を対象とした展開があるが，γ系ステンレス鋼については未解明の問題も多い。そこで，γ系ステンレス鋼を中心に，その脆化の特徴と本質についての基本事項と現状を文献について整理し，今後の研究課題をさぐってみたい。