表面機能制御研究分野

摘要

本研究分野では，固体表面計測瀾御について研究活動を行っている。2003年の研究活動としては，以下のように概括される。本研究では，既存の電子回折法の測定装置,測定方法,解析手法,原理を見直すことにより，これまで複雑で解析が困難であった表面構造を簡単に，しかも直接的に観測できるような新しい表面構造解析法の開発を行っている。 昨年度までに，エネルギーフィルターを備えた散漫中速電子回折装置を用いて，結晶中の原子の振動相関に着目した振動相関熱散漫散乱法を開発し，表面を構成する原子間の結合の長さと方位を直接的に観測することに成功している。 また、表面構造解析手法として一般的に普及している低速電子回折（LEED）においても、表面構造の直接的な観測を目指して研究を行っていたが、こちらも多数のLEED回折スポットの強度を平均化する方法（CMTA-LEED法）により，疑似運動学自胸折強度を実験的に測定し、直接的な観測に成功した。 さらに、多数の回折スポットが琴測可能な反射高速電子回折（RHEED）においても市販装置にエネルギーフィルターを付加することで、表面原子配列を直接的に観察する手法（方位角走査RHEED法）を開発することに成功した。 以上のよぅに、これまでは表面の原子配列のみに着目して研究を行っていたが、今年度は表面の原子が持つスピンも同時に解明する手法の開発を開始した。 表面原子の配列と価電子スピンの向きが判明すれば、表面の特異な磁性現象を明らかにできると考えている。 また、磁性を利用したナノテクノロジーデバイスを設計·評価するうえで欠かせない手法となると考えている。この新手法では、これまでに開発した原子配列を直接的に観測できる電子回折を、スピンの向きが揃った電子線を用いて行うことになる。 これにより表面原子配列とスピンの向きを同時にかつ簡単に決定できる。 今年度は、スピンの向きの揃った電子線を得るための、スピン偏極電子銃を製作し、その性能試験を行った。 まだ調整段階であり、満足のいく性能は得られていないが、作成した電子銃から電子回折に十分なスピン偏極電子を取り出せることを確認した。 今後、この新手法の実証実験を進める予定である。