高圧流体の物性と精密測定技術：高圧流体の定圧此熱測定

摘要

本解説で話題とする定圧比熱に関しては，このPVT状態方程式を偏微分することによって数学的に値を算出することが可能であるが，コンプレッサーの設計計算に使用する領域は，気相域（いわゆる過熱蒸気域）で有効なものであればよく，定圧比熱のような数学的な誘導状態量の挙動まで良好に算出可能なものであるとは限らない。さらに，理想気体状態から大きく異なった熱力学的な挙動を示す液相域（いわゆる圧縮液体域）においては，PVT状態方程式自体も複雑なものとなり，その誘導状態量である定圧比熱の値もPVT性質に関する実測値と比較して精度が劣ることが指摘されている。 新しい冷媒を作動流体として使用するエアコンや冷凍機の設計において，定圧比熱に関する情報は，特に凝縮器や蒸発器などといった熱交換器の設計に必要不可欠な情報である。この情報の正確さによって，新たに設計される機器の省エネルギー性能が大きく影響されるため，定圧比熱に関する正確な情報を得ることは二酸化炭素排出量の削減のためにも有益となる。 したがって，PVT状態方程式からある程度の正確な情報を得ることが可能な定圧比熱であるが，できる限り実測値情報に基づいた数値を使用することが望ましい。 特に高圧流体となる液相域に関しては，状態式によって算出される数値に大きな不確かさを包含する恐れがあるため，正確な実測値情報に基づいた数値を使用するべきである。 本解説では，筆者の研究グループが測定を行ってきた液相域における定圧比熱の測定を中心に，最近の定圧比熱の測定に関する動向について述べる。