農産物·食品の安全と品質の確保技術（第10回）－生鮮野菜の定量的な鮮度評価技術について

摘要

本稿では，生鮮青果物の鮮度について，食品の嗜好機能の一部として評価されることの問題点を指摘した上で，青果物の収穫後生理に立脚した鮮度評価手法について解説した。「高鮮度な野菜」への希求は，我が国のみならず全世界に共通であり，鮮度評価の重要性は益々高まるであろう。また，世界で生産されている農産物の30%以上がテーブルにのはることなく流通過程で廃棄されているといわれ，こうしたポストハーベストロスをいかにして縮減していくかが，今後の世界人口の増加に対応した食料供給のあり方を考える上で一つの重要なファクターとなる。ポストハーベストロスは，新興国によく見られるコールドチェーン等の食品流通インフラが未整備であることに起因すると同時に，物流効率が優先される現状の食品流通システムの中にあって，粗雑なハンドリングを受けることによって起こる部分も多い。こうした問題の解決策の一つとして，取扱商品に対する鮮度検査を実施しながら鮮度管理の重要性を啓発する仕組み作りが考えられる。今後，フードチェーンの中で活用可能な，より高精度で簡便，迅速かつ低コストな鮮度評価手法の開発が求められよう。