複合材構造健全性診断技術開発第5章光ファイバセンサによる衝撃損傷検知システムの開発

摘要

炭素繊維強化複合材料（CFRP）は，その比強度，比剛性を生かして構造重量軽減へ寄与できる他，高い耐腐食性によるメンテナンス性の向上など，優れた特性を背景に航空機構造への適用が拡大している.しかしながら，複合材料には外部からの異物衝突により内部にはく離をともなった大きな損傷が発生し，外観からその内部損傷の大きさを判断することが難しいという問題がある.そのため，民間航空機複合材構造の耐空性型式証明方法の指針であるAC20－107Bには，検査での損傷の見逃しや非破壊検査の能力を考慮した設計をすることが要求されている.例えば，目視発見が困難な衝撃損傷（barely Visible impact damage，以下BVID）については，終局荷重への耐荷能力が必要とされる（カテゴリー1）.一方，目視発見可能な損傷（visible impact damage，以下VID）については，損傷サイズと発見の容易さによってカテゴリー2または3に分類され，共に制限荷重以上の残留強度が要求されるものの，カテゴリー2は定期点検で発見できる損傷サイズであり，カテゴリー3は発生から2～3回の飛行内で確実に発見できる損傷サイズとなっている.なおカテゴリー2は，定期検査間隔の2倍の運用でも損傷が強度上問題となる大きさまで拡大しないことを証明する必要がある.