炭素繊維強化複合材料の曲げ強度及びクリープ特性に及ぼす吸水の影響

摘要

CFRP及びエポキシ樹脂を900°C以下の各環境温度下で水に浸潰させた場合の曲げ強度及びクリープ特性を調べた結果，以下の結言を得た．1）CFRP及びエポキシ樹脂の吸水率は，浸漬させた水の温度が高いほど大きくなる．浸漬期間60日，環境温度90°Cの場合，常温の場合と比較して，吸水率はCFRPでは2.9倍，エポキシ樹脂では3.4倍になる．2）環境温度90°Cで30日以上浸漬させたCFRP及びエポキシ樹脂では，吸水率が飽和状態に達せず増加する傾向にある．これは，CFRP及びエポキシ樹脂内部に，エポキシ樹脂の加水分解によりき裂が生じ，そのき裂に水が浸入するためである．3）30日以上各温度条件下で水に浸漬させたCFRP及びエポキシ樹脂の曲げ強度は，浸漬前の場合と比較してそれぞれ2.3％，1.9％以上低下する．環境温度が高い場合（90°C），それらの強度は，浸漬期間の影響を大きく受ける．4）浸漬温度90°Cで30，60日間水に浸漬させたCFRPの強度低下の原因は，CFRP内部にき裂及びはく離が生じるためである．このため，面内ひずみは小さいが，厚み方向のひずみは大きくなる．5）環境温度が高い状態で浸漬させた場合，CFRPのクリープ破壊に至る時間が短くなる．6）環境温度50°C以上で浸潰させた場合，定常クリープ域におけるひずみ速度が大きくなる．70°Cの場合のひずみ速度は，水に浸漬させていない場合の15倍以上となる．