チタン基金属間化合物の高温形状記憶合金としての可能性

摘要

形状記憶は,マルテンサオト変態に関連して起こり，変態温度以下で安定なマルテンサイト相を変形後，変態温度以上に加熱することにより，元の形状に回復ずる特性である。マルテンサイト変態は，無拡散変態であり，変態温度を境にして組成は変らずに結晶構造のみが変わる。そのため，隣接する原子同士は，変態後も隣接関係を保つ。また，変態温度以上で安定な母相とマルテンサイト相は，お互いの結晶格子が対応関係にあるため,母相（オーステナイト相）とマルテンサイト相の界面は整合しており，この面を晶壁面と呼ぶ。マルテンサイト変態に伴う格子変形だけでは，整合性のよい晶壁面を作ることができないため，格子変形とは別の，格子不変変形が必要となる。形状記憶合金では，格子不変変形は双晶により起こり，転位が導入されないため,逆変態の際には双晶が消滅することで形状回復が可能となる。母相とマルテンサイト相の界面が整合であるため,母相とマルテンサイト相の界面正ネルギーはかさく，変態は平衡温度付近で起きる。そのため，変態時に大きな過冷却や過熱が不必要であり，変態温度ヒステリシスがホさいという特徴がある。