径10mの宇宙反射鏡とインフレータブル支持構造体の地上展開実験

摘要

本稿では，2002年2月25日に金沢工業大学にて，同大学，神戸大学，NTTが共同で実施した直径12mの宇宙インフレータブル構造体で支持した平面反射鏡の地上展開実験を中心に述べた。 このような大形宇宙構造物は，近年米国を中心に活発に研究開発が進められているが，限られた構成とはいえ十分な精度の大形構造物が比較的容易に作れることが示された．今回製作したモデルでは，均一展開を可能にする折り畳み方法が取り入れられている．本展開実験は気密層だけであるが，気密層を規定の内圧で膨張させた状態で，この上に硬化層を実装する技術も小形モデルで検討がすすhでおり，大形な宇宙インフレータブル構造体を独自に作るのも今や夢ではない．今回の設計，製作，実験を通して，宇宙インフレータブル構造の研究開発における様々な課題が抽出できた．その中の重要な課題は，今後航空機を使った微小重力環境実験や真空チャンバを使った熱真空環境実験などの場を活用して研究を進める予定である．しかし，重力環境下で十分な実験を行うことが難しいインフレータブル構造は，研究段階から宇宙環境を利用した実験が不可欠である．このため，早い時期にピギーバックや小形ロケットによる宇宙実験を行い，実用化へ向けてのステップを重ねることが重要である．本研究は，直接的には大形な宇宙構造の構築を目的とするものである．しかし，その成果の波及効果はこれに留まらない．宇宙インフレ一夕ブル構造の技術は，低コスト化や軽量化といつた効果が期待できるので，必ずしも大形な構造でなくそも，これまでの構造の概念を大きく覆す可能性を持っている．それは，宇宙を利射した様々な実用サービスの掟倶の低コスト化にも大をな影響を与えるのみならず，新たなサービスの創出にも貢献できる．近年では，学生による衛星設計や宇宙実験も活発に進められている．このように，通常はピギーバックによる打ち上げが想定されている小形衛星でも，宇宙インフレータブル構造を使うことにより，宇宙を利用した様々な実験がこれまで以上に簡単かつ低コストに実現できることが期待される．