結晶性金属錯体ナノ空間が拓く新しい高分子化学

摘要

人類の発展に大きく寄与してきた高分子材料の研究は，長年にわたる化学の主要テーマであるが，高効率化·高機能化が求められる21世紀には，ナノレベルで随意に高分子の構造制御や集積ができる技術の開発が望まれている.しかし，通常，高分子材料を合成するときはフラスコや反応釜といったマクロスケールの反応容器を用いるので，得られる高分子鎖は必然的に絡み合ってしまい，ナノレベルでの制御は困難である.これに対して，ナノスケールの均一な空間を用意して，それをフラスコとして用いることができれば，フラスコを構築する壁が重合反応に大きな影響を及ぼし，高分子の一次構造や集積状態の制御を行うことが可能になる.つまり，ナノスケールのフラスコを自在に設計（フラスコのサイズ，形状，表面機能性など）することができれば，多彩な高分子を目的に応じた構造，集積様式で得るシステムができるはずである.