クリセン骨格を導入した感温特性を示す高輝度Eu（III）錯体の光物性

摘要

発光性の感温塗料は車両や航空機、化学プラントの表面温度を計測するために有用である。その中でも、3価のユウロピウム（Eu（III））錯体を含む感温塗料は色純度の高く長寿命な赤色発光を示すことから注目を浴びている。既報において、Eu-tmh錯体（tmh：tetramethylheptanedionate）ではLMCT（ligand to metalcharge transftr）準位へのエネルギー移動に由来した感温特性を示すことが報告されている。Eu（III）錯体では有機配位子が光を吸収するため、有機配位子の光吸収能力を向上させことで発光強度を増強することができる。βジケトナト配位子は10~4M~(-1)cm~(-1)程度のモル吸光係数（ε）を持つが、多環芳香族炭化水素はさらに大きなεを有することが知られている。よって、本研究ではLMCT準位がEt-tmh錯体と同程度のエネルギーに形成し、大きな光吸収能力を示すことが期待されるクリセン骨格に着目し、そのEu（III）錯体の感温特性について検討した。