全部床義歯装着者における実験用口蓋床の厚さが [n]持続発音時の下顎位に及ぼす影響

摘要

本研究の目的は，全部床義歯装着者において実験用口蓋床の厚さが[n]持続発音時の下顎位に及ぼす影響を明らかにすることである.被験者として全部床義歯装着者10名（平均年齢76.4歳）を選択した.厚さ3.0 mmと5.0 mm (義歯床粘膜面から義歯床研磨面までの距離）の2種類の実,験用口蓋床を作製し，各被験者に応用した.下顎運動計測器K7を用いて，厚さ3.0 mmもしくは5.0 mmの口蓋床装着時および口蓋床非装着時（コントロール）の3条件で，[n]持続発音時と下顎安静時における下顎位を記録した.その結果，[n]持続発音時の顎間距離では，2種類の口蓋床装着時と非装着時との間に有意な差は認められなかった.下顎安静時の顎間距離においても同様に3条件間で有意な差は認められなかった.以上より，全部床義歯装着者において口蓋床の厚さが5mm以下ならば，[n]持続発音時の下顎位には影響を及ぼさない可能性が示された.