硬膜外麻酔併用腰椎麻酔下前立腺全摘除術の有用性についての検討-硬膜外麻酔併用全身麻酔下前立腺全摘除術との比較－

摘要

恥骨後式前立腺全摘除術における硬膜外麻酔併用腰椎麻酔（硬麻併用腰椎麻酔）の有用性を検討した．2003年7月より2004年2月までの間に硬麻併用腰椎麻酔下恥骨後式前立腺全摘除術を施行した連続した20例を対象とした.2002年4月より同年12月までの間に硬膜外麻酔併用全身麻酔下恥骨後式前立腺全摘除術を施行した連続した20例と比較した．純粋な麻酔による影響のみを検討するために，術中合併症のあった症例が含まれない様に期間を設定した．手術は全例，同一術老が行った．出血量は，硬麻併用腰椎麻酔下群の方が有意に少なかった（p＝0.024）.術後平均飲水開始日は，硬麻併用腰椎麻酔下群は0.4日，硬麻併用全身麻酔下群は1.1日であった（p＜0．0001）．術後平均食事開始日は，硬麻併用腰椎麻酔下群は0.7日，硬麻併用全身麻酔下群は15日であった（p＜0．0001）．術中平均血圧の最高値は硬麻併用腰椎麻酔下群の方が有意に低かった（p＝0.002）.硬麻併用腰椎麻酔下前立腺全摘除術は，硬麻併用全身麻酔下前立腺全摘除術と比較して術中の出血量が少なく，血圧変動が小さかった.また，術後腸燥動の回復が早かった．硬麻併用腰椎麻酔下前立腺全摘除術は，術中出血量の減少と術後早期回復が期待でき，全身麻酔関連の合併症が予防できることなどから硬麻併用全身麻酔下前立腺全摘徐術より利点が多いと考える．