切除17年後に閉塞性黄疸で発症した 腎癌孤立性膵転移の1例 本邦腎癌膵転移例の文献的考察

摘要

76歳,男性。 17年前に腎腫瘍で左腎摘出術を施行されている。 尿の黄染を自覚し,近医より閉塞性黄疸として紹介された。 CT上膵頭部に造影効果の強い腫瘤を認め,膵内胆管の狭窄と総胆管の拡張を認めた。 血管造影で胃十二指腸動脈から栄養される腫瘍濃染像を認めた。 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。 開腹所見では,膵頭部に拍動性のある柔らかい径4cmの腫瘤を認め,体尾部には認めなかった。 組織検査では,典型的なclear cell type腎細胞癌を認め,腎癌膵転移巣が閉塞性黄疸を来したと考えられた。 腎癌は切除後長期間の後,転移再発の形式を取ることがある。 一方,転移性膵腫瘍は切除の対象となることは少ないが,腎,大腸,肺からの転移が報告され,他に遠隔転移を認めない場合,切除が第一選択とされる。 腎癌膵転移は,病勢の指標となる腫瘍マ-カーもなく,長期経過後に出現することがあり,早期診断は困難であるが,造影効果の強い膵腫瘍を認めた場合,鑑別の一つとして考慮すべきと考えられた。