膵頭十二指腸切除後の難治性腹腔内出血に対する 一期的膵吻合再建の経験

摘要

膵頭十二指腸切除（PD)術後の腹腔内出血は致死的合併症として知られる。本症例は膵 液瘻に起因する難治性腹腔出血に対し，術後34日目に再開腹した。出血源の膵空腸吻合部を切 離.膵胃吻合へ一期的に再建変更し止血したものでまれな治療経験として報告する。54歳女 性。膵神経内分泌癌十二指腸浸潤でPD施行。術後8日目に腹腔内出血をきたし膵腸縫合不全 と診断した。その後出血を繰り返し，30日目の出血時CTで膵吻合空腸内に造影剤のextravasation を認め， 血管内治療の適応がないことから34日目に再開腹した。出血の確認後，膵空 腸吻合を離断。断端を含む残膵の炎症変化が少ないこと，近接する胃との吻合が容易なことか ら膵胃吻合再建とした。食事摂取は遅れたが出血はなく再手術から43日目に退院となった。 PD後の腹腔出血では初回出血を予兆と強く認識すること，再開腹の適応について早期に判断 することが重要と考えられた。