閉塞性動脈硬化症における~(99m)Tc－tetrofosmin運動負荷下肢シンチグラフィ 動態像に認められる一過性軟部描出亢進現象と虚血下肢高集積像の病態解析

摘要

間欠性披行を主訴とする閉塞性動脈硬化症21症例を対象に，運動負荷4分後に~(99m)Tc－tetrofosmin370－555MBqの投与を行い，下肢筋軟部集積像の根像に加え，静注直後における動態像をも撮像し，2種の画像を結びつけた解析を行うことにより，虚血肢の検出および下肢血流の評価を試みた．全身背面像における下肢全体のAffected Nomal Ratio（ANR）は0．97±0．12で虚血肢を高集積肢として検出することは困難であったが，足部ANRは0．82±0．14を示し，1例（4．8％）を除き虚血肢足部において低集積を示した．動態像では虚血肢のみに一過性大腿軟部描出亢進境象（9例429％）を認め，下肢虚血を示す診断意義の高い所見と考えられた．動脈描出不良，一過性大腿軟部描出亢進，静脈早期描出の各所見による動態像における虚血肢検出能はsensitivity 71．4％，positive predictive value93"8％を示し，さらに全身背面像上の足部集積低下とによる総合評価を行うとsensitivityは85．7％Lこ改善した．動態像から下肢通過時間を算出したところ，虚血肢（12月±3．1秒）は対側肢（17．3±4い5秒）と比較し有意に短時間であり（p＜0.0001：paired- test），また一過性大腿軟部描出亢進を示した虚血肢の大腿部は有意に高集積を示した．これらの結果は，虚血肢では負荷後の高血流状態が遷延していることを反映しており，下肢高集積は血流の増大を示唆すると考えられた．しかし虚血股には低集積を示す部位も存在し，末梢循環は複雑な調節下にあることも推測された．本シンチグラフィは虚血肢の診断に有用なだけではなく，下肢各部の末梢循環を把握しうる検査と考えられた．