環境酸素濃度による培養ヒト角股上皮細胞の細胞増殖および細胞死に対する影響

摘要

角膜上皮細胞に対する環境の酸素濃度は瞬目や睡眠時の閉瞼などにより常に変動している．環境酸素濃度の変化が代謝活性や細胞機能にどのように影響を及ぼすかをSV40を導入した培養ヒト角膜上皮細胞の細胞増殖および細胞死を指標として検討した．角膜上皮細胞を異なる酸素濃度（1，21，60％）で培養すると，通常（21％酸素）および低酸素下（1％酸素）の培養では，時間依存的に細胞数が増え，BrdU取り込みが増加したが，高酸素下（60％酸素）では抑制された．乳酸脱水素酵素の放出およびアポトーシスの程度は，通常および低酸素下での培養に比べ，高酸素下での培養で増加した．Aktのリン酸化は高酸素下での培養で認められた．このように培養ヒト角膜上皮細胞は高濃度の酸素により細胞増殖が抑制され，アポトーシスによる細胞死が増加した．さらにアポトーシス抑制シグナルであるAktが活性化され，角膜上皮細胞の細胞死が制御されていた．しかしながら，低濃度の酸素では細胞増殖やアポトーシスは影響を受けなかった．