変形性膝関節症に対する各種ヒアルロン酸製剤の関節内注射の医療経済分析

摘要

本邦では有痛変形性膝関節症患者が約780万人いると推定され，介護保険での要支援者の 19.4%と最も多い原因疾患である関節疾患のほとhどを占めている変形性膝関節症では，患 者の約70%が各種ヒアルロン酸製剤の関節内注射の対象とされている。そこで，分子量の 異なる3種類のヒアルロン酸製剤について臨床研究論文から除痛効果と共に6力月間の関 節内注射回数および通院回数を調べ，直接医療費と約30%の患者およびその付添い家族の 労働損失による間接医療費を計算した。1回の関節内注射の薬剤費が安価である分子量約 90万のアルッデイスポ~R,分子量約190万のスべニール~Rデイスポは，6力月間の平均通院回 数がそれぞれ13.8回，11.4回ど多いため，6力月間の治療に要する直接および間接医療費を 合計した—総医療費はそれぞれ108,211円，86,752円となった。1回の関節内注射の薬剤費が 高価な分子量約600万のサイビスクディスポ~Rは，6力月間に9.0回の通院と3.7回の注射の治 療に要する総医療費力583，231円となる。慢性疾患においては1回の関節内注射に要する治 療費だけでなく ，長期間の治療による直接医療費や患者および家族の治療に要する時間拘 束による間接医療費，鎮痛効果や関節内注射時の局所痛，注射後の感染など副作用発現の リスクを考慮した上で，使用するヒアルロン酸製剤を選択する必要がある。