本態性高血圧患者における塩酸ペニジピンの8mg投与による臨床評価

摘要

高血圧治療の主目的は，血圧コントロールによる脳，心臓および腎臓といった臓器における合併症の発症·進展の予防である。 厳格な降圧治療がその予防に右効であり，カルシウム拮抗薬を最大投与量まで使用する機会も多くなってきている。 そこで今回，本態性高血圧患者における塩酸ペニジピンの最大投与量である8mg投与による有効性を臨床評価した。対象は本態性高血圧患者30例で，未治療症例（未治療群）19例と他のカルシウム拮抗薬を内服したにもかかわらず降圧目標を到達していない症例（他剤切替え群）11例である。 対象症例に塩酸ペニジピン8mgを1日1回6カ月間朝食後に投与し，診療時ごとに血圧および脈拍数を測定し評価した。その結果，血圧は塩酸ペニジピン投与により両群共に有意に低下し，降圧効果は未治療群で84.2％，他剤切替え群で70.0％であった。 脈拍数は両群共に着意な変化を認めず，脈圧は両群共に有意に低下した。 患者背景の因子で分けて検討したところ，高齢者で塩酸ペニジピン投与による脈圧の低下作用が強く認められ，女性および合併症のない症例に，血圧および脈圧の低下作用は強い傾向が示された。 塩酸ペニジピン8mg投与は，未治療の本態性高血圧患者に限らず，他のカルシウム拮抗薬を内服したにもかかわらず降圧目標を到達しない本態性高血圧患者においても有効であり，特に高齢者でその傾向は強く，心血管疾患の発症予防に有益な治療法であると考えられた。