クアゼパム単剤投与への切換により，中途覚醒·熟眠障害が著しく改善し，社会復帰を果たしたアルコール依存症の1例

摘要

症例は53歳，男性でアルコール依存症の患者である。 2年程前にリストラに遭い，以降機会飲酒から連続飲酒に陥り，家族に対しても強い睡眠障害（中途覚醒·熟眠障害）を漏らしていた。 初診時には，意欲·集中力の低7などのアルコール依存症に随伴したと思われる精神症状と睡眠障害を認めた。 家族の希望もあり，入院期間は1カ月となったが，外来通院1カ月までの断酒，肝疾患治療薬により肝機能などの身体症状は改善した。 しかし，睡眠障害に対しては，プロチゾラム0.25mg，フルニトラゼパム1mgで治療を開始したが改善には至らず，上記精神症状とともに外来通院にて治療を継続した。 外来通院中，様々な睡眠薬の調整を試みたが，睡眠障害は改善せず，日中の眠気も増加したため，睡眠薬をトリアゾラム0.125mg/日とフルニトラゼパム1mg/日からクアゼパム20mg/日へと単剤投与に切り換えた。 2週間後睡眠障害が劇的に改善し，さらにクアゼパム30mg/日に増量したところ，アルコール依存症に随伴していた精神症状も消失し，日常の括動性が増して社会復帰を果たした。睡眠障害を有するアルコール依存症患者に環レて，クアゼパムを用いることは有効な薬物選択の1つになると思われた。