赤血球造血における比較血液学的視点

摘要

造血系は進化の過程で殆どの脊椎動物に保持され,中でも赤血球の存在は,脊椎動物に共通している。多様 な動物種を対象とする比較生物学的アプローチは,生物の仕組みの理解の基礎になるのと同時に,未知の生体制御系の探索に展開可能である。最近ではゲノ厶情報を活用した才ミクス解析や,全RNAシークェンシングな どの網羅的分子検索も可能になった。この技術革新によって,かっては分子実験手段を欠いた「非モデル」動 物であっても,「モデル」動物化が急速に実現しつつあり,発見研究のパラダイムシフトとなりつつある。実験 血液学においてもヒ卜ゃマウスに対象を限ることなく,様々な動物種の血球形態.機能,造血制御,造血因子 の構造や作用などの解析を進めることによって,造血制御の多様性?普遍性の探求が可能である。特に動物の 進化を考察する上で,赤血球造血は殆ど全ての脊椎動物で共有されている指標として位置づけることができる。