アレルギーならびに生体防御における好塩基球の新たな役割一日陰者が一気に檜舞台に一

摘要

好塩基球の存在は，いまから120年以上も前にノーべ ル医学生理学賞受賞者であるPaul Ehrlichによって報告 されており，T細胞やB細胞などリンパ球に比べてか なり長い経歴をもつ。しかしながら，好塩基球の生体内 での機能に関しては長い間，謎のままであった。好塩基 球は末梢血白血球のわずか0.5%を占めるにすぎない極 少血球細胞であるため，機能解析に十分な数を集めるこ とが難しく，研究の対象となりにくかった。また，末梢 組織に常在するマスト細胞（肥満細胞）といくつかの類 似性（好塩基性分泌顆粒の保有，高親和性IgE受容体 FcsRIの発現，ヒスタミンなどケミカルメディエーター の分泌など）を有するため，しばしばマスト細胞の前駆 細胞や血中循環型のマスト細胞などと誤解され，好塩基 球が独自の役割をもっているかに関しては長らく疑問視 されていた。好塩基球のみを欠損するモデル動物が存在 しないことも，好塩基球研究が進展しない大きな要因で あった。