Induction Therapyを施行した正岡分類Ⅲ，Ⅳa期胸腺腫の3切除例

摘要

背景.正岡分類Ⅲ，Ⅳa期胸腺腫に対するinduction therapyの有効性に関する統一した見解はない．症例．induction therapyを施行後に切除したⅢ，Ⅳa期胸腺腫3例を経験したので報告する．正岡分類の内訳はⅢ期2例，Ⅳa期1例で，浸潤部位は上大静脈2例，左腕頭静脈1例，上行大動脈1例，右房1例，心膜1例．induction therapyの内訳は放射線療法1例，放射線化学療法＋化学療法1例，化学療法1例．照射量は40～66Gy，照射野は2例とも縦隔．化学療法はADOC療法（cisplatin，vincristine，adriamycin，cyclophosphamide）を施行した．induction therapyの臨床的効果判定は全例PR．全例拡大胸腺全摘術および他臓器合併切除術を施行し完全切除であった．病理組織学的効果はEf．3が2例．術後補助療法は放射線化学療法を1例に施行．転帰については，全例無再発生存中である（術後8年7ヶ月～3年11ヶ月）．結論.心大血管浸潤を伴うⅢ，Ⅳa期胸腺腫の3例に対するinduction therapyの効果は全例PRが得られ良好な治療成績であった．自験例および文献的考察から，Ⅲ，Ⅳa期胸腺腫に対するmultimodality treatment（術前化学療法，拡大切除および術後放射線化学療法）が治療成績を向上させる可能性があると考えられた.