緊急気管切開後に気管切除再建を行った気管腺様嚢胞癌の一例

摘要

緊急気管切開で気道を確保した後に気管切除再建術を行った気管腺様嚢胞癌の1例をビデオ提示する．【症例】40歳女性．半年前より咳嗽が出現，増悪?軽快を繰り返していた．その後血痰が出現し，当院呼吸器内科で気管支鏡検査を施行，声帯より3cm末梢側に腫瘍性病変があり気管内腔の8割を占めていた．同日緊急入院後に呼吸困難が増悪した．緊急気管切開術を施行，腫瘍の末梢側に気切チューブを留置した．病理診断で気管腺様嚢胞癌との結果を得た．【手術所見】全身麻酔下で，スパイラルチューブ6Frで経口挿管し，気管支鏡で観察しながら腫瘍を乗り越え，気管分岐部直上にチューブ留置した．気管支鏡で腫瘍が輪状軟骨より2ring末梢から気切部下端に及ぶことを確認した．気切から頸部襟状切開し気管を露出させた．腫瘍は周囲組織と癒着していたが明らかな組織浸潤を認めなかった．気管中枢側および末梢側にテーピングした．末梢側気管を気切部下端で離断し術野挿管とした．中枢側はマーキング部位で離断し，気管病変を摘出した．切除した気管の全長は7ring，約4cmであった．気管頭側および尾側の断端は陰性であった．気管再建は4-0バイクリルで端々吻合とした．頚部屈曲を保持すべく，下顎および前胸部をナイロン糸で縫合し固定した．手術時間は4時間59分，出血量は87mLであった．【考察】気管の端々吻合においては吻合部の緊張を減少させることが必須である．Laryngeal releaseには複数の方法があるが，本症例では気管分岐部剥離のみで十分な受動が得られた．