泉州地区における悪性胸膜中皮腫21症例の臨床的検討

摘要

当院で悪性胸膜中皮腫と確定診断を得た21例についてレトロスぺクティブに検討した.性別は男性15例，女性6例，年齢中央値67歳であった.職業上アスベスト曝露歴は11例で明らかであり，それ以外の症例でも画像所見からアスベスト曝露が疑われた症例は5例あった.診断法として，胸腔鏡下胸膜生検， 経皮針生検が多く，診断までに60日(中央値)を要した.治療法は8例に胸膜肺全摘術を施行し，生存期間中央値14.4力月，2年生存率30%,合併症による死亡が1例(13%)であった.非手術例に関し，13 例中，化学療法が7例に，放射線治療が1例に対して施行し5例は支持療法のみ施行した.化学療法については1例長期生存(41.6力月)が得られた.当院はかって石綿紡績工場が多く存在した大阪府泉州地区にあるがアスペス卜曝露歴が明らかでない症例も多く，環境曝露の可能性を否定できず，胸水貯留例は明らかなアスペス卜曝露がなくても本疾患を疑っていく必要がある.