消化管平滑筋の弛緩反応に関与するβ－アドレナリン受容体サブ夕イプの分布及びβ_3－アドレナリン受容体のユニークな抑制性緊張制御機構の解明

摘要

モルモット食道 胃底 十二指腸 回腸 盲腸紐を用いて，消化管平滑筋の弛緩反応に関与するβ－アドレナリン受容体サブ夕イプを明らかにするとともに，その弛緩反応機構についても検討した．各種β－アドレナリン受容体拮抗薬を用い，モルモット消化管平滑筋の弛緩反応に関与するβ－アドレナリン受容体サブ夕イプを解析した結果，食道ではβ_1-サブ夕イプ，盲腸紐ではβ_2－サブ夕イプ及びβ_3－サブ夕イプ，胃底 十二瀾腸 回腸ではβ_3－サブ夕イプが主として関与していることが示された．これらのサブ夕イプの存在は，RT－PCR法を用いたmRNA発現の測定によっても確認された．更に，モルモット胃底平滑筋におけるβ_3－アドレナリン受容体を介する弛緩反応機構を検討したところ，カテコラミン及びβ_3－アドレナリン受容体活性薬により引き起こされる弛緩反応は，アデニル酸シクラーゼ阻害薬（SQ－22，536）及びcyclic AMP依存性プロテインキナーゼ阻害薬（H－89）により影響を受けないことが示された．また，アデニル酸シクラーゼ阻害薬存在下において，カテコラミン及びβ_3－アドレナリン受容体括性薬は，cyclic AMP量の上昇を伴わない（cyclic AMP非依存性）弛緩反応を引き起こした．このcyclic AMP非依存性弛緩反応は，電位依存性Kチャネル阻害薬の4－アミノビリジンにより有意に抑制された．以上の結果は，消化管平滑筋の弛緩反応には，β_3－アドレナリン受容体が主として関与しており，その弛緩反応機構の可能性として，4－アミノビリジン感受性電位依存性Ⅸチャネルの活性化が考えられることを示している．