慢性糸球体腎炎：IgA腎症と紫斑病性腎炎の発症病態からみた治療戦略

摘要

小児期に発症しやすい代表的な慢性糸球体腎炎として，IgA腎症と紫斑病性腎炎がある.近年， 両疾患の発症にはIgA1ヒンジ部の糖鎖不全が関与していることが判明した.これらの遺伝的要 因を背景として，抗原刺激により活性化されたT細胞やB細胞により産生されたIgA1糖鎖不全 免疫複合体が糸球体に沈着し，補体，マクロファージゃメサンギゥム細胞の活性化を介して炎症が 惹起し，糸球体障害が進展する.腎障害の進展を防ぐためには，これらの免疫応答を制御すること が重要である.特に重症例に対してはステロイ薬，免疫抑制薬，抗凝固?線溶薬やアンジォテンシ ン酵素合成阻害薬を併用した多剤併用療法が施行され，その結果，腎死例は減少し，腎炎の長期予 後の改善が認められている.今後は，小児が成長発達期であることをより考慮し，さらに副作用を 最小限に抑えた層別化した治療法の開発が望まれる.