遺伝子組換え卵胞刺激ホルモン（Org 32489）を用いた調節卵巣刺激一日本人女性を対象とした前向きオープン多施設共同試験：日本と外国のIVF試験の比較

摘要

遺伝子親換え卵胞刺激ホルモン（FSH）（Org32489，フォリトロピンベータ）を日本人女性に用い，生殖補助医療（ART）を施行した場合の有効性と安全性を評価するため，前向きオープン多施設共同試験を実施した．さらに，118名の白人女性により外国で実施された臨床試験結果と比較検討した．本試験では，ARTのために調節卵巣刺激（COH）が行われた153名の日本人女性を被験者とした．ブセレリンを点鼻投与し下垂体機能を抑制させた後（ロングプロトコール），最初の4日間はOrg32489を150IUまたは225IU連日皮下投与され，その後投与量は個別に調節された．有効性の主要評価項目である採卵数の平均（±標準偏差）は，本試験では12．7（±9．6）であった．外国で実施された試験においては11．7（±6．7）であり，いずれの人種においても同様の効果が示された．症例あたりの平均良好胚数（日本人3．8vs．白人4．5）や治療症例あたりの妊娠継続率（22．9％vs．26．3％）などその他の評価項目においても両試験とも同様の結果が得られた．一方,本試験では，投与期間が短かく（日本人8．4日vs．白人9．8日），総投与量が少なく（1，781IUvs．2，063IU），ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン剤（hCG）投与の前日の血清FSHが高値を示した（14．5IU/Lvs．12．3IU/L）．この血清FSH値の差は体重で補正することにより消失し，日本人女性の体重が低かったことに起因すると考えられた．また，体重あたりの総投与量は両試験でほぼ同じであり，投与量が個別に調節されたことで，採卵数等の効果におよぼす体重の影響は補正されたものと考えられる．なお，中等度ないし高度の卵巣過剰刺激症候群（OHSS）の発現率は日本人と白人被験者間で類似していた（2．0％vs．3．4％）．以上，Org34289によるART施行は日本人においても有効かつ安全であり，Org32489に関する外国臨床試験の成績を日本人に適用可能と考えられる．本剤は，従来の尿由来のFSH製剤に代わり，ARTにおけるCOHに使用できる新しいFSH製剤となると考えられる．