術前HLAタイピングにより，致死的GVHD発症率の高いドナー 優位one way HLA matchingとなる生体肝移植を回避し得た1例

摘要

本邦では，1989年，第1例目の生体肝移植施行後， 2008年末までに5,000例を超える生体肝移植が施行さ れている。近年では，年間400?500例の生体肝移植 が施行され，5年生存率も75%を超えており，肝不 全治療の重要な選択肢として確立されたと考えられ る。本学でも2007年2月以降，9例の生体肝移植を 施行し，良好な結果を得ている。肝移ネ直において，graft-versus-host disease (GVHD) はまれな合併症であるが，発症すると致死的経過をた とることが多い。Human leukocyte antigen (HLa; -A,HLA-B, HLA-DRの3部位で，ドナーがホモ接合体， レシピエントがヘテロ接合体であるドナー優位のone -way HLA matchingが成立する組み合わせは，生体肝 移植術後GVHDのリスク因子として知られてい る。当教室では，本学第1例目の生体肝移植以前に， 血清学的HLA検査により，このような致死'的GVHD 発症率の高いドナーとレシピエントの組み合わせとな る生体肝移植を回避し得た経験を有するので，文献的 考察を加えて報告する。