肝移植領域における移植認定医制度の意義と認定医の役割

摘要

移植認定医制度を発足させるに至る経緯と概要については，寺岡理事長と許専門医認定医制度委員長の論文に述べられているので省略する。その経緯の中で，2007年9月7日の理事会で認定医制度の発足は賛成多数で決議された。その決議では反対意見は2名のみであつたが，その2名は肝臓移植医であった。このことが移植学会をして認定制度整備を遅らしめ，その間に臨床腎移植学会が認定医制度を整備し，移植学会認定制度に先立ち発足してしまった。もっとも腎移植では急がねばならない状況もあり，一方で肝臓移植は施設認定が確立され指導体制も整っている施設で行われており，もとより肝移植がきわめて高い手術o周術期管理の技量知識を必要としていることから，既に肝移植力確立されている施設ではその必要性を実感しないというのが当時の原因であったと考えられる。しかしながら，結局その後，肝移植分野においても技量や倫理の不足欠如が指摘される事例が明るみになったことは読者の記憶にも新しい。これらの事例の後，日本において肝移植数が減少し，特に関東においてまだ回復していない。いまこそ，肝移植においても倫理知識技量力担保された医師が診療に当たることが国民から求められている。