顔面神経の微小血管減圧手術により生じた複合性幻視の自己体験11．電顕像に随伴する湯および水について

摘要

抄録:第1報で電顕写真の鮮明な幻視は，長期視覚記憶が手術により復号化を起こし，復号化情報が外的視覚の人力路と交通を生じた結果と提言した。 本報は入浴中，湯面は視知覚から遮蔽されているにもかかわらず，1，2カ月後に開眼して現れた幻視は，電顕像の手前に湯面が横たわり，電顕像の下半分は湯面に浮遊して物体性を帯び，湯面の高さと方位，湯面の形状はイメージにより容易に変容し，これらの現象は入浴中以外でもみられた。 場面の幻視は入浴中に体表の受けた視覚以外の触空間識による独自の長期記憶の復号化が，電顕像記憶の復号化と同時に進行したことによる。 幻視の湯面の定位性は，視知覚にょる電顕像幻視に比べて不安定でイメージに従いやすく，特にマリオネット暗点(M)の固視は幻視像の変容を促進した。 また電顕像幻視に囲まれた空間に現れる水の幻視は種々で大部分は長期記憶の復号化によるが，渦巻の発現はMを中心とした網膜内面の血流による錯視と推論した。