「今後の研究のための病態」の運命一DSM-IEからDSM-IVまで一

摘要

DSM-5の「今後の研究のための病態（Conditions for Further Study)」に相当する付録が，DSM-IH-R (1987年刊行）において初めて収載されるに至った経緯と，DSM-1V(-TR)，そしてDSM-5における推移を概説した。当初は，黄体期後期の不機嫌障害，自己敗北型人格障害，サディズム性人格障害の3つの診断カテゴリ—が今後の研究を要するとして掲載されたにすぎなかったが，DSM-IV(-TR)ではそれが14の診断カテゴリーに拡大した。現在ではその半数くらいが，直接的または間接的にDSM-5に継承されたようである。「暫定的に与えた基準案を用いて臨床研究を行い，その診断カテゴリーの臨床的有用性に関する科学的証拠を集めて改訂する」というDSMの基本理念が明示されている部分として，今後の研究のための病態をめぐる議論に，床家はより注目すべきかもしれない。