総論癌幹細胞の本質とは何か?—基礎研究から臨床応用へ一

摘要

癌難治性の原因の1つは,その多様性,不均一性(heterogeneity)であり,治療抵抗性のみならず癌転移や再発の根源と考えられている。正常組織の多様性は自己複製能と多分化能を持つ幹細胞が担っているが,近年,このような癌多様性の構築に,幹細胞のような性質を持つ僅かな細胞集団が担っている可能性が報告されている。すなわち,自己複製能と多分化能(非対称性分裂)を示す癌幹細胞のみが腫瘍を作り出す能力を持ち(cancer initiation),その階層性によって「がh」の多様性が生み出されるという「階層性モデル」(hierarchy model)である。幹細胞の運命系譜を制御する転写因子,クロマチン制御因子,スーパーエンハンサ一に加え,工ピゲノム変動やミ卜コンドリア老化,宿主ニッチ環境などの基礎研究から,癌幹細胞の本質について新たな知見が得られており,治療応用の可能性が期待されている。