加速器BNCT照射システムの必要性

摘要

中性子捕捉療法（NCT: Neutron Capture Therapy）の原理は、中性子が一九三二年に発見された四年後の一九三六年に米国の物理学者により提唱された。一九四〇年代に加速器からの中性子を利用して細胞や小動物を用いた基礎研究が行われ、熱中性子や熱外中性子などの低エネルギー中性子とホウ素10（~(10)B）の核反応を利用するホウ素中性子捕捉療法（BNCT: Boron NCT）が推奨された。BNCT治療は、研究用原子炉を用いて十分な強度の中性子照射が可能になった一九五一年から米国ブルックヘブン国立研究所（BNL）において悪性脳腫瘍に対して世界で初めて実施された。研究用原子炉はBNCTに必要な強度と安定性を確保できる中性子源として用いられているが、BNCTが注目を集め始めた一九八〇年頃から使い勝手に優れた加速器を用いたBNCT照射システムが期待されていた。原子炉と加速器のBNCT利用に関係する主な特徴を以下に示す。