乱流制御の夢,夢の途中－I：翼周りの剥離流に関するスマート制御

摘要

剥離流れの制御は工学的にも重要性が高いことから，種々の流れ場に対して膨大な研究成果があり，詳細なレヴューも報告されている．航空機の翼についても，剥離制御手法は無数に提案されてきた．その一方で航空機に実用化されている剥離制御技術は，フィン型ボルテクスジェネレーダやスロッテドフラップ等の静的な手法がほとhどである．しかし，飛行艇や戦闘機等の一部にしか採用されていない空気吹き出し式の動的な剥離制御手法も，近い将来の旅客機に適用される可能性の高い流れ制御技術の一つとして有力視されつつある．そのきっかけの一つとなったSeifertらの研究によれば，一定の流量を定常的に吹き出すよりも周期的な変動を重畳した方が桁違いに少ない流量で大きな高揚力効果をもたらすことが見出されており，制御デバイスが軽量化できる可能性が示された．最近では，正味の投入流量がゼロの周期的吹き出し/吸い込みも剥離の制御に有効であることが確認されており，制御デバイスがさらに小型軽量化できる可能性が飛躍的に高まっていることから，そのようなデバイス開発と応用研究も精力的に進められている．