パルスデトネーションエンジン研究とその現状

摘要

デトネーション現象の推進機構への応用は斜めデトネーションエンジン(oblique detonation wave engine, ODWE)，ラムアクセラレータ(ram accelerator, RAMAC)のdetonative mode，パルスデトネーションエンジン(pulse detonation engine, PDE)などがある．これら推進機構はKailasanathによって詳しく論じられている．本稿では，近年実用化に向け研究開発が活発化しているPDEについて解説する．PDEではデトネーション波（爆轟波）をパルス状に発生させ推力·仕事を得る．デトネーション波は極超音速で自走的に伝播するため，片端が閉じ他端が開放されている管（片閉管）内に瞬時に高圧気体を生成することができる．そのため，片閉管のような単純な構造体によって，化学的に生成する熱エネルギーから高効率で仕事を取り出すことが可能である（原理的には圧縮過程がない場合（圧縮比1）で理論熱効率約30％）．このような片閉管内でのデトネーション伝播－高圧気体生成－高圧気体の噴射を間欠的に行うエンジンをPDEと呼ぶ．本解説の前半ではPDEの作動原理と熱力学的な利点を，後半ではエンジン実用化に向けた取り組み·課題を紹介し，研究の現状について述べる．