臨床応用を目的とした磁性リポソームキャリアの基礎的研究

摘要

人工生体膜として知られているリポソームは，薬物運搬体としての技術導入(drug delivery system: DDS)を目的として盛hに研究が行われている．近年では，温度やpHの変化に感受して局所で薬物を放出する温度·pH感受性リポソームや，リポソーム表面に抗体を結合した標的細胞指向性リポソームなどが多く作成されてきており，MRI診断時におけるガドリニウム(Gd)やマグネタイト(Fe{sub}3O{sub}4)などの造影剤キャリアとしてのリポソーム利用も期待されている．一方，磁性リポソームなどを外部磁場により標的誘導する場合，標的部位におけるリポソームの滞留時間に制限があると考えられるため，標的部位でのリポソーム膜崩壊および標的細胞との膜融合は，これらの手段を用いるにあたって重要課題となる．本研究では，代表的抗酸化物質として知られるコエンザイムQ{sub}10(CoQ{sub}10)を膜疎水性領域に封入した磁性リポソーム(CoQ{sub}10-P-SUV)を調製し，四塩化炭素(CCl{sub}4)惹起性肝障害時におけるCoQ{sub}10-P-SUVの脂質過酸化阻害効果について基礎的検討を行った．