火力発電プラントの水処理技術の最近の動向

摘要

電力事業用の発電プラントでは，戦後から今日にわたって高温高圧·大型化が図られてきた。高温高圧下に曝されるポイラ管の使用環境は厳しく，腐食を抑制するために現在表1に示す3種類の水処理（リン酸塩処理，揮発性物質処理，酸素処理）が実施されている。 戦前から戦後にかけては，アルカリ処理（固形アルカリ剤を使用し水のpHを高くするとともに水中の酸素を除去する）が使用されていたが，この方法では，高温部の管壁にアルカリが濃縮し，アルカリ腐食を生じる問題が発生するため，発電プラントの高温高圧化が図られていく過程で使用されなくなり，今日国内事業用プラントでは完全に姿を消した。 アルカリ処理に代わって低リン酸塩処理（リン酸ナトリウムで水のpHを高くするとともに水中の酸素を除去する）が今日のドラム型ボイラで使用されているが，アルカリ腐食の問題が完全に解決された訳ではない。 揮発性物質処理（AVT）は固形物を使用せず，揮発性物質のみ（アンモニア，ヒドラジン）を使用し，pH調整と脱気処理をするので，アルカリが濃縮する心配はない。 高温·高圧化を囲った大型の貫流ボイラが1960年代以降に建設されているが，これらのボイラではいずれも揮発性物質処理が使用されている。ところで，アルカリ処理，リン酸塩処理，揮発性物質処理は，いずれも腐食の原因となる水中の溶存酸素を機械処理と薬品（ヒドラジン）処理により取り除く。