沸騰硝酸水溶液の酸化還元反応に対する熱力学的考察

摘要

沸騰硝酸水溶液（共沸濃度以下）における高い鞍化力発生機構を理解する上で，硝酸水溶液中に存在する窒素酸化物を検討し，熱力学モデルを用いて熱力学計算を行うことで以下のような結論を得た。 硝酸水溶液中における重要な窒素酸化物は，NO_3~-，HNO_3，HNO_2，NO，NO_2である。 硝酸濃度と温度が上昇すると，硝酸は解離しにくくなり，HNO_3の存在量が増す。 同時に硝酸の分解生成物であるNO_2が生じる。 沸騰硝酸水溶液における鞍化還元電位の上昇は，バブル相にNO_2などのガス状窒素酸化物成分が移行し溶液から絶えず排除されることでHNO_2の熱分解が加速され，その濃度が低下することにより生じる。硝酸水溶液の熱分解反応に関してHNO_2の分解反応を考慮する必要はあるがHNO_3およびNO_2の分解による0_2の生成は考慮する必要はない。 熱力学的に計算したHNO_3／HNO_2平衡電位と実測の硝酸水溶液の酸化還元電位は一致している。