亀裂開口依存率を用いた地下空洞周辺岩盤内の応力解放に伴う引張亀裂進展の評価

摘要

地下空洞周辺岩盤の損傷。破壊プロセスはその応力経路によって多様であることから，本論文では，最大主応力の値がほぼ一定で，最小主応力の値だけが掘削の進行によってほぼ単調に減少する場合に限定して，応力解放効果としての引張亀裂の生成。 進展を分析する方法について検討した。 まず,応力解放過程での岩盤の実挙動を理解する上で，引張亀裂の集合を応力解放の初期段階で重要な役割を演じる微細な一次亀裂と，岩盤の板状構造化をもたらす二次亀裂とに分類して，これらの有効ヤング率への寄与を時系列的に分析することが重要であると強調した。 そして，事例解析によって亀裂開口依存率による定量評価が有望であると結論した。 次に，破壊力学の二次亀裂進展予測への応用とこれによる有効弾性係数の評価法を提案した。具体的には，亀裂均質化モデルの数値解を利用する方法を提案するとともに，ひずみ測定値に関するシミュレーションによって，同方法の有効性を明らかにした。そして，二次亀裂は長さ方向の間隔（2w)りがこれと垂直な方向の間隔（2h)に較べて相当に大きいことを明らかにした。 さらに,応力解放過程における引張亀裂の進展則などについて考察し，ひずみの計算値と測定値の良好な一致から，亀裂均質化モデルの代表寸法－1?により無次元化された亀裂進展量（加ル?）を応力解放（圧縮応力の減少）加吉に等しい亀裂進展推進応力血兄と亀裂進展抵抗どの比の関数によって与える方法が有望であると結論した。 ただし，一連の解析においては，弾性応力解析で得られる一意的な応力履歴を利用した。 これは弾性応力解析に基づく予測法の開発を意図したためではない。筆者らは，応力解放を経験していない天然岩盤の強度特性の解明と破壊力学的アプローチによる新たな硬岩構成式の構築に向けた一つの試みであると，本研究を位置づけている.