海水と内陸部との温度差を利用した海水淡水化技術の経済評価（その1）－経済的に実現可能な建設対象地の条件

摘要

本報では、従来海水淡水化プラント単独では供給が不可能であった、内陸部への脱塩水の供給が可能な技術である『造水パイプライン』の効率化を検討し、概略コストを算出し、経済的実現可能性が高い対象地の条件を明らかにした。 続報（その2）において実際に条件を満たす建設対象地の気象データを用いて経済評価を行う予定である。検討結果をまとめると以下の通りである。 1. 今回の試算条件下において、淡水の年間精製率は輸送部1本あたり89,000m{sup}3～212,000m{sup}3であり、アフリカの生活用水使用量平均である23m{sup}3/yr·capitaを基準とすると、3,900人～9,200人分の生活用水に相当し、十分実用に耐えうる量の造水が可能である。 2. 造水単価は1.00～6.83 USD/m{sup}3であり、沿岸部と山岳部との距離が短いほど効率的に機能するという造水パイプラインの特徴を如実に表した結果となった。 3. 経済的実現可能性が高い対象地の条件は概ね、凝縮部標高1,000m以上かつ輸送部延長5km以下、もしくは凝縮部標高500m以上1,000m未満かつ輸送部延長2km以下であることが示された。